研究概要 |
経済学史上の均衡・不均衡理論(アダム・スミスの自然価格論における成長均衡論、マルクスの市場価値論における均衡・不均衡理論、マ-シャルの産業の均衡に関する生物学的均衡・不均衡理論など)を現代均衡理論、不均衡理論の理論模型を駆使して解明し、前者に含まれる豊かな諸概念、諸構想を再構成することを通じて、後者のいっそうの展開、発展を試みることにより、研究代表者の従来の研究成果(著書、History of Economic Theory,1989:論文、On Equilibrium and Disequilibrium,1989)をさらに拡充することが本研究の目的であった。二年間の研究成果は、学会誌等に公刊されつつあるが、そこでは以下に見るように、経済学史上の多くの均衡・不均衡に関する概念、構想、理論などが発掘、検討され、現代的な均衡理論、不均衡理論との比較、検討を可能にするために数理的なモデルによって表現されている。 本研究の主要な成果は、(1)リカ-ドのそれとは異なるスミス・マルサス的成長、利潤理論の解明とそれを基礎にしたマルサスの最適貯蓄性向の非ケインズ的解釈、(2)最近の森嶋道夫氏の見解に対してリカ-ド機械論における不均衡理論の可能性を擁護したこと、(3)賃金基金説批判の先駆者であるロンジの資本概念の解明と新古典派資本概念の先駆者としての評価、(4)マルクスの国際的不等価交換の概念の解明と批判的経済理論の今後の可能性の模索、(5)チュ-ネンの自然賃金論の合理的再構成、(6)ジェヴォンズ資本理論の新古典派資本理論の先駆者としての評価、(7)マ-シャルの生物学的な産業均衡、不均衡概念の解明とその産業政策へのワルラス的解釈にもとづく批判に対する反論、などであるといえよう。
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