研究概要 |
本研究は、交付申請書に書いたように、研究対象の展開にそくして三段階にわけられる。第一段階は、1760年代に始まる「ウィルクスと自由」運動であり,第二段階は1779年から始まるワイヴィルのヨ-クシァ連合運動であり,第三段階は1789年のフランス革命の勃発によって刺戟を与えられて展開されるフランス革命論争とそのもとでの運動である。 まず平成2年度は、第一段階の「ウイルクスと自由」運動に重点をおいた研究を行った。さしあたり分析の対象にしているのは、『ノ-ス・ブリトン』紙とウィルクスの書簡集であるが、そのほかに議会資料の分析の必要を感じ、ハンサ-ドのマイクロフィルム版を読み始めた。なおマイクロフィルム版は、大量に読むばあい目を痛めるので、ゼロックスコピ-に転換することにし、そのために本研究費の一部をあてることにした。また、ウィルクスに関する若干の二次文献を入手し、一部に目を通した。「ウィルクスと自由」運動の研究をすすめるなかで問題としてうかびあがってきたのは、平成3年度の研究計画調書にも書いたようにアメリカ植民地をめぐる論争との関連をどうおさえるかという問題であるが、もう一つ気づいたことは、『ジュニアス書簡』のような匿名文献の分析である。これは『パブリック・アドヴァタイザ-』紙にのったものだが,ジャ-ナリズムの成立と社会運動という、日本ではまったく未開拓な分野の研究の必要を私に痛感させた。 残念ながら、まだ研究成果を公表するに至っていない。昨年秋に2カ月近い入院生活をよぎなくされたこともあって、研究計画がかなりおくれていることを告白しなければならない。一橋大学その他での資料調査も昨年の秋に予定していたが果せず、春休みを利用しなければならなくなった。なお、第二段階のワィヴィルについても分析をすすめており、その一部は、6月の「十八世紀学会」の全国大会で報告の予定である。
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