本研究計画の第二年目にあたる平成3年度は、「イギリス急進主義の運動と思想」の第二段階の中心人物ワイヴィルを中心に研究を行った。ワイヴィルは、1779年から始まるヨ-クシァ連合運動の中心人物であるが、実はフランス革命期にも重要な役割を果す。つまり「イギリス急進主義の運動と思想」の第二段階であるが、一般にこの期の運動としてはロンドンを中心とした「人民の友」と「ロンドン通信協会」がとりあげられる。しかしワイヴィルは、「人民の友」に密着しつつもそのメンバ-とならず、ヨ-クシァという地方に根ざしたユニ-クな運動と思想を展開するのである。そうしたフランス革命期のワイヴィルについて、6月に札幌学院大学で行なわれた「日本18世紀学会第13回全国大会」で報告した。このワイヴィル研究を通じて、反省を迫られていることは、本研究開始期には1800年の団結禁止法までを3段階にわけて考えていたが、それでは不充分で、1825年の団結禁止法の撒発と1832年の第一次選挙法改正までを視野に入れ、その時期を第四段階としなければならないということである。フランス革命をブリュメ-ル18日までとすると、その後もワイヴィルは活動をつづけており、カ-トライトと論争しているからである。この期の資料はヨ-クにあることがわかったおり、できれば夏休みを利用して調査に行きたいものと考えている。また、第二段階から第三段階にわたる研究のなかで、もうひとつ気づいたことは、この時期のアイルランド情勢のもつ意味である。アイルランドでは、ウルフ・ト-ンらのユナイテッド・アイリッシュメンがあり、この組織と運動がイングランドのみならずスコットランドにも一定の影響を与えるのである。ユナイテッド・アイリッシュメンの運動は、日本ではまったく知られていないが、ウルフ・ト-ンのメモワ-ルなど若干の資料を入手し、目を通しつつある。
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