この研究は、日米の投資ビヘイヴィアの相違が両国の国際競争力構造にどのような影響を及ぼしてきたかを、1965年以降の25年間について、比較計量分析することであり、主な研究実績は以下のように要約される。 1.日米の製造業、主要業種についてR&Dストックを推計し、その成長率を比較した。全期間を通じて日本がアメリカを3%ほど上回っているが、両国ともに第1次石油危機を境に成長率が40%ほど低下している。 2.R&Dストックの成長の総要素生産性への貢献は、アメリカが49ー50%であるのに対して、日本では54ー68%であり、石油危機以前ではアメリカの値を20%近く上回っている。 3.R&D投資と設備投資の関係を業種別に比較すると、70年代後半から、両国ともに鉄鋼、化学ではR&D投資の増大が設備投資の増大と結びつかなくなっている。それに対して、機会系部門では、R&D投資と設備投資の結びつきは全期間を通して強い。例外はアメリカの自動車部門であり、R&Dと設備投資との相関は弱い。 4.ハイテクを中心とする機械(輸送用を除く)部門では、両国共にR&D投資の成長が著しいが、成長率は日本の方が高く、両国の競争力を拡大させる要因となっている。 5.R&D投資の内外経済、各部門への波及効果を測定するためのパイロット・モデルを構築し、まくろ・レヴェルの波及経路に関するシミュレ-ションを行った。部門レヴェルでの分析については、継続して行う予定である。
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