平成3年度は、前年度に行なった日独両国の統計指標体系にかんする資料調査と基礎分析にもとづき、経済構造の指標を析出するために、指標分析の対象を、部門分析のための包括的な加工統計である産業連関表に絞って調査研究を進めた。 本研究に関連して、学術振興野村基金の助成を得て、ドイツ国において、旧西ドイツの産業連関表の作成と分析にかんする使査研究を実地に行なった。それによって、(1)ドイツでは、わが国のように政府統計局(連邦統計局)だけでなく、ドイツ経済研究所(ベルリン)等の5大経済研究所によって、それぞれ特色がある産業連関表が作成されていること、および(2)わが国で一般に利用されてるケインズ型産業連関表による最終需要→生産誘発量計測型の分析だけでなく、投資材取引行列型産業連関表をも利用した産業部門間の技術的連関の構造記述・分析的研究が多く行なわれており、設備投資が新しい展開を見せている産業転換期を対象として、技術係数の変動過程を追跡するためには、これまでの産業連関分析法を基本的に見直すことが必要であることを確認した。 そのために、ドイツ調査後、産業連関表の創始者であるW.レオンチェフの投入産出理論を再検討することによって、ケインズ型産業連関表では、産業部門間の技術構造が経済与件として「ブラックボックス」化され、分析の対象からはずされることから、それを打き彫りにするためには、部門間関係を記述する新しい表章形式が必要かつ可能であることを、二つの論文にまとめ、本年7月の経済統計学会において発表する。また、わが国の産業連関表についても、研究代表者が指導教官である大学院生(朝倉啓一郎)が、論文「磁気媒体デ-タによる産業連関表の部門統合の分析」を発表し、ドイツ側の構造指標研究に対応する具体的な作業研究を進めている。
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