極東は天然資源の宝庫と言われるが、自然状態のままでは、経済財として人間の生活向上に役立てることは出来ない。そのためには、採掘と販売のため多くの資金が必要であるが、資金不足による開発困難は当分続くであろう。さらに、現在では、資源のもたらす経済的利益を地元産地企業、地元行政府、中央政府の3者の間でどう分配するのかも解決すべき問題になっている。 この研究では、つぎの天然資源について旧ソ連邦域内での分布を白地図上に点で示した。水力発電、石油・ガス、ダイヤモンド、金、錫、水銀、アルミニウム、タングステン鉱、鉛、亜鉛、蛍石、雲母、アスベスト、黒鉛、鉄綱石、銅、ニッケル、硫黄、準宝石、燐鉱石、岩塩、温泉。このうち、アンダーラインは、バイカル湖以東(東シベリアの1部と極東)に主として分布している資源を示している。 金(プラチナ、銀を含む)の生産は極東に集中している。ヤク-チア(現在サハ共和国)では、ソ連時代200-300トンの金を毎年中央政府に送っていた。この総保有高もソ連の崩壊に伴い2300トンから230トンにまで低下したと言われている。極東の特産品として錫は有名である。旧ソ連の98%は極東が生産(埋蔵量では90%)。極東で不足している鉄鋼生産に関して、その埋蔵地は決して少なくないことが、地図上で確認できる。しかし、極東では製鉄一貫工場が未だに実現していない。 とくに不足が著しいのは電力である。水力発電の開発余地は大きいのに、水力発電の総合ポテンシアルの6%しか開発されていない。 極東の石油・ガスの埋蔵地はヤク-チア北部とサハリンの東北大陸棚である。前者はとくにガスの埋蔵量が大きい。両者とも今後の開発に大きな期待がかけられている。サハリン石油・ガス開発には、日本、米国、欧州の大企業が参加している。海底油田開発可能水深は200メートルが限度であるが、極東海域でこの範囲内で有望な鉱床は100箇所以上ある。石油生産とならんで、製油所の精製能力を引上げることも、極東の当面の緊急な課題である。
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