本研究は、在米日系製造企業の現地共同調査のデ-タを使って、わが国の主軸産業が弱体化しつつあるアメリカ製造業にどのように「代替化」しつつあるか、その日米経済にとっての含意はなにかを分析することにあった。本研究への取組みとその実績の形成は、平成2年度末の現時点においておよそ次のようなものである。 (1).上記調査デ-タが平成1年秋のものであるので、それ以後の日系現地企業の活動状況に関する情報を、新聞、雑誌、各種文献資料を収集し、整理した。(2).関係日本製造企業の本社サイドにアプロ-チし、在米工場と日本親工場のパフォ-マンス(生産性、品質、納期、収益性など)の比較を中心に、その企業戦略と見通しなども含む諸問題についてフォロ-アップ・インビュ-とアンケ-ト調査を行った。(3).以上の新規収集・整理した情報を原調査デ-タと合わせて分析・評価して一定の成果をえ、なお継続中である。その現時点までに得られた主な知見とそれを部分的に発表した成果は以下のとおりである。 1.まず、自動車組立、同部品、家電、半導体の4業種の主要現地工場の生産性をそれぞれの日本親工場と比較すると、各目平均で75〜80%、プロダクトニックス、派遣日本人や品質、メンテ要員のコスト差など調整して、実質65〜70%という評価を得た。 2.他方、にもかかわらずこれら日本現地工場は、アメリカ市場において着実にアメリカ企業の工場のシェアを奪っている。統計的に確認できる平成2年の数字で、自動車組立が13%(輸出含め30%)、CTV約45%、これに輸出を含めた日本企業のアメリカ市場のシェアは急速に高まりつつあり、これは一方で米産業を支えつつ、投資摩擦問題を同時に大きくクロ-ズアップしている。
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