本研究の主要目的は(1)ソ連・新経済政策(ネップ期)になぜ外資導入が再開され、社会主義工業化の時期になぜまたしても廃止されたのかという点、当時の外資の実態を調べること、(2)ゴルバチョフのペレストロイカ期になぜ外資導入が復活したのか、その外資の実態の調達の2点であった。(1)と(2)の関連についていえば、ネップ期の外資導入が社会主義の原則に矛盾するからスターリン時代に廃止されたとすれば、ペレストロイカ期には社会主義の再活性化をめざすなかで、外資がどのような意義をもつのかという点にあった。しかし研究を進めていくなかで、ソ連が解体し、その主な後継国家であるロシア連邦が社会主義経済を放棄し、市場経済への移行を明確にうちだしたため、外資問題を社会主義というイデオロギー的観点から考えることが難しくなった。 したがって、本研究のとりまとめに当っては、ネップ期については、当初の予定通り、外資導入の必要性と導入の実態、外資導入が結局失敗した理由、社会主義イデオロギーと外資の関係、社会主義工業化のなかで外資がしめだされた点などを含めることができた。しかし現在の外資問題については、社会主義の問題は除き、主に純経済的観点からみた外資の必要性、外資導入の実態、西側からみた問題点などを客観的にとらえることにした。 しかし、とりわけネップ期の問題について、研究はまだ十分ではない。レーニン・トロッキー・ブハーリンなど主要人物が外資導入に果した役割、スターリンが外資導入を廃止した理由、日本の対ソ投資問題などである。3年間の情報収集でかなりのデータは集められたが、今後も引き続き資料収集と研究を進め、不十分な点を補なって、近い将来まとまった単行書として発表したい。
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