研究概要 |
本研究は2年間で完了する予定であり、研究の初年度にあたる本年度は、研究対象としている文安2(1445)年の「兵庫北関入舩納帳」(以下「納帳」と略記)に記録された兵庫入港の全船舶(1965件)の入港月日・船籍地・積載商品とその数量・関税額とその納入日・船頭名・荷受主(問丸)のすべて(全項目数約14,000件)について、(1)デ-タの確定作業、(2)コンピュ-タへの入力、(3)現地調査等、分析のための基礎作業をおこなった。 (1)デ-タの確定作業:「納帳」に記載されている事項について、個々に検討を加え、解読と解釈をおこなって、コンピュ-タへの入力可能な状態にデ-タを確定する作業をおこなった。 (2)コンピュ-タへの入力:確定することができたデ-タをコンピュ-タに入力する作業を研究補助者(大学院生)の手をかりて遂次すすめている。現在(平成3年2月現在)全デ-タの約70パ-セント程度のインプットを完了しており、ほぼ当初の予定通り作業は進歩している。 (3)現地調査:「納帳」には108か所の港湾が船籍地として記載されているが、そのすべてについて現在地、その機能等について明らかになっているわけではない。現地調査によって現在地との比定をおこなうとともに当該地において補助史料の調査・収集等につとめた。 以上のように、今年度は、15世紀なかばの瀬戸内海海運の実態解明にとって不可欠な史料である「納帳」の具体的研究と分析のためのデ-タ・ベ-スの作成につとめてきた。当初の研究計画はほぼ予定通り進歩しているので、これらのデ-タ・ベ-スを基礎にして、研究の完了年度である来年度は、瀬戸内海地域の海上交通の実態、商品生産の地帯構造、流通構造の変化等について分析をおこない、15世紀の瀬戸内海地域の海上交通と商品生産のあり方を総合的・体系的に明らかにしたい。
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