本年度の研究では為替レ-ト協調が必ずしも好ましい効果をあげない実例を考えてみた。国際政策協調がうまくいかない場合には二つのケ-スが考えられる。ひとつは、国際協調がなければ、A国の政策の誤り(たとえばインフレの高進)は為替レ-トの変化(減価)によりA国の不利に働くはずであるが、このような場合に、政策協調があると、為替レ-トが変化しないよう、B国もA国の政策をコピ-してしまうからである。1986ー88年にかけての、協調利下げによる、G7諸国の低金利政策は、この種の悪影響(バブルの発生)を日本に及ぼした可能性が高い。このように、タ-ゲット・ゾ-ンも、その運用を遠ると、必ずしもうまくいかないことが実証された。 第二のケ-スは、A国とB国の信じるモデルが異なる場合である。A国はA国が信じる世界経済モデルに基づいて行動し、B国はB国の信じる世界経済モデルに基づいて行動したとすると、その結果は真のモデルがどのようなものかにより、実際には、両国とも善意に政策をたてても結果的には、独立に政策立案をした場合より経済厚生が落ちる可能性のあることが示される。 1991年には、1990年まで順調に減少してきた経常収支が反転して上昇に転じた。ただし、1990年の経常収支の減少には一時的要因も含まれていると考えられるので、この分析もおこなった。一時的要因を考慮に入れても、1991年には反転していたと考えられる。従って、1990ー91年の円安傾向が、1991年の経常黒字の大きな要因であると考えられる。
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