研究概要 |
平成2年度までに,マイクロ・コンピュ-タを購入して,内臓されているハ-ドディスク装置に企業財務デ-タ,証券市場での価格形成デ-タを入力した。これらデ-タを前提にして,東証一部上場全館価を対象にしたマルチファクタ-・モデルの推定を実施した。マルチファクタ-・モデル推定の前段階におこなわれた因子分析(factor analysis)において考察の対象となったファクタ-変数は財務分析指標,市場動向指標の2種類のみで,合計96個にのぼる。これらを因子分析によって解析した結果,株式ポ-トフォリオを分析するために相応しいファクタ-としてPER,規模,ベ-タ係数,自己資本比率など合計8個のファクタ-が妥当であることを発見した。但し,これらの変数の組合せについてはその分析デ-タがクロス・セクションの回帰を前提にしているためと,推定時期によっては必ずしも安定的ではないことを注意しておかなければならない。これら8個のファクタ-を用いて,株式の月次投資収益率を説明するための重回帰分析を実行したところ,平均的には決定係数で0.25以上の説明力を有することが判明した。由来の現行ポ-トフォリオ理論にもどづくシングル・ファクタ-・モデルの平均的説明力が0.10前後であることに比べれば,飛躍的にモデルの説明力が改善されたということができる。このマルチファクタ-・モデルを用いることによって現実の企業年金資金が投入されている株式ファンドの運用パフォ-マンスを更に合理的に分解することが可能となり,要因分析(attribution analysis)を実施することで年金運用パフォ-マンスの実施が可能になったということができる。
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