研究概要 |
現代ポ-トフオリオ理論(Modern Porttolio Theory;MPT)の日本の資金運用市場への適用可能性を実証的に検討すると同時に,わが国の年金資金運用の合理的方法論を検索するために,平成2年度の実証研究で推定されたマルチファクタ-・モデルを利用して,現実の年金ファンドの運用成果を幾つかのファンダメンタルズ要因に分解して,要因分析(attribution analysis)を実施することが平成3年度の課題であった。3年度には旧年度からの課題であったマクロファクタ-要因(金利,為替など)をとりこんでミクロファクタ-とも整合的な運用成果を評価するための分利用具を開発することが目的であった。かくして当年度には時価総額要因,PER,市場レベレッジなど合計10個のミクロ・ファンダメンタルズ要因に加えて,長期金利感応度,生産指数感応度および短期金利感応度という3つのマクロ要因を採用して,合計13個から成るマルチファクタ-・モデルを確定した。 次に外部研究機関(日本公社債研究所)の協力の下に入手した,わが国の年金運用機関(とりわけ信託銀行)の年金ファンド(株式口)の運用成果を上記のマルチファクタ-・モデルを用いて評価することを試みた。数個の株式運用ファンドを年金資金運用のベンチマ-クとしての東証株価指数(TOPZX)との対比において要因分解した。その結果として,近年のわが国の年金資金運用は,米国からの現代的投資理論の影響もあってか,ベンチワ-クと同等の運用成果を期するインデックス・ファンドの普及が著しいことが発見された。 その他の年金資金運用の定性的側面については,報告書の中で要的する予定である。
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