現代ポ-トフォリオ理論(Modern Portfolio Theory)の日本市場への適用可能性を探ることと、わが国の企業年金資金の合理的方法論を探ることが、本研究の課題であった。平成2年度には、わが国の上場企業を対象に企業財務要因や市場要因を取り込んだミクロ型のマルチファクタ-・モデルを推定した。このモデルはマクロ要因をある代表的なマクロ指標に対するセンシティビティ-という形でも採用している。このモデルを用いることで、現実に信託銀行や生命保険会社で運用されている年金ファンドの運用実態が要因分析(attribution analysis)によって明らかにすることができる。 平成3年度には、外部の研究機関である日本公社債研究所の協力を得て、幾つかの年金ファンドにこのマルチファクタ-・モデルを適用して要因分析を実施し、信託銀行を中心に運用されている株式ファンドの特徴を明らかにした。マルチファクタ-・モデルに採用されている10個のファクタ-に関して、年金運用のベンチマ-クとして考えられている東証株価指数(TOPIX)との対比をおこなってみると、近年の米国からの運用の考え方の影響もあってか、最近の企業年金資金の株式ファンドはパッシブに運用される比重が高まりつつあることが判明した。すなわち、ベンチマ-ク並みのパフォ-マンスを超過することを企図したアクティブ型のファンドに代えて、インデックス・ファンドが急速に普及しつつあることが明らかになった。
|