1980年代中葉から始まった西ドイツ地域における大型合併の動きは、東西ドイツが統一した後でもなお基本的には変らないのであるが、しかし研究頭初に考えられていたものに若干の修正が必要となってきている。統一前の合併・産業再編成を志向する場合、被合併側も相当程度の技術水準および合併後における同一産業部門でのマ-ケットのシェア-の拡大が期待されるという積極的なインセンティブが、促進要因となっていた。しかし統一後は、その積極的なインセンティブがやや後退し、むしろ東ドイツ地域の産業企業の技術力・資本力・経営管理能力等々資本主義企業としての基本的土台を構築することが当面の課題になりつつある。その面からみると、1980年代のEC統合後の域内のリ-ダシップとしてのイニシアチブを握るべく押し進めてきた、ドイツ銀行・ダイムラ-・ベンツ・コンツェルンの戦略に、以前ほどの強力さが減退せざるを得なくなってきたようにもみえる。だがやはりEC統合後の域内最大の経済力を維持することが確実なドイツにあって、その経済・産業界に中核的地位を占めるドイツ銀行・ダイムラ-・ベンツ・コンツェルのドイツ内における影響力は着実に増大していることが、発表した2つの論文によってある程度、明らかになったと考えられる。とりわけ2社間の関係を歴史的経緯を分析することによって従来考えられていた以上に緊密であること、資金的関係も、AEG吸収合併の際に可成り密接かつ利害を一にしていることが明らかになった。さらに強大化したコンツェルが、ドイツ銀行を背景としてドイツの国家政策、とりわけ高度技術産業分野にも大きな影響力を及ぼしつつあることも2つの論文である程度分析が加えられている。さらに現在のこうした動きをなしてくる背景まで堀り下げたのが、秋に刊行予定の著書である。ここでは過去通貨改革から通貨統合までの41年間のドイツ企業分析がおこなわれる。
|