研究概要 |
昨年度の研究は、1980年代の中葉から始まった西ドイツ地域における大型合併についての分析、ならびに東西ドイツ統一という新しい事態をどう捉えるかということに重点をおいて分析をおこなってきた。本年度は、前年度の研究をそれぞれED供合,東西ドイツ統合ならびに東欧諸国との関係等を見据えながら,研究のボウリングをおこなった。とりわけED域内におけるダイムラ-ベンツコンツェルンとドイツ銀行との連携による経済影響力の増大は明らかである。さらにクロスボ-ダ-的合併提携のみならず、産業構造的変化,たとえば当該コンツェルンが、イギリス・フランスにおいて所謂下請け条列化を推進すべく巨額の投資をおこないはじめ出している。これは明らかにEC統合後に非関税・商品流通等を考慮に入れたEC内の国際的分業体制へと向うことの動きである。さらに本年度の研究で新しい段階として,東ドイツ地域への西ドイツ地域の主要企業・コンツェルンの将来に向けての投資およびプロジェクトの計画・実施について概観した。所謂ドイツ地域の10大コンツェルンの東ドイツ地域への侵出についてである。他方東ドイツ地域の従来の国有企業の民営化を推進している「信託公社」(Treuhandanstalt)の活動の現状と将来展望について,前述のコンツェルンの動きとを連動させてみることにした。この分析については、また誰れもが研究の緒についたばかりで本格的な展開は今後に待たねばならないものの,現状の分析については、発表論文において一応おこなっている。残された問題としては、ドイツの東ドイツ地域へのコンツェルンの具体的産業再編成と、産業地図の塗り替えがどこまで進むのか、さらにこれを基盤としてEC域内で、さらにどのようなクロスボ-ダ的産業構造の変化が生じていくか、確かにこれからの問題ではあるが、興味のあるものである。
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