研究概要 |
日本の工業化の経済主体として、国際的にも著名な日本財閥の形成過程を経営史的側面から実証的に明らかにすることを課題として、三井・三菱・住友を中心として史料の発堀・整理・分析を進めてきた。本年度はそのなかで,三菱財閥の形成過程に関する第一次史料の採集において大きな成果をあげることができ、今後も引き続いて史料採集を行う予定である。内容は、同財閥の多角化と資本蓄積において最も基底的な役割を果たしてきた同財閥の炭砿業、金属鉱業、重工業部門、ならびに中枢部門たる本社関係の史料である。これらは、三菱系各機関の特別の配慮を得たもので、現在非公開の史料である。これらは、新たに発堀したものであり、現在なお整理中であるが、今析が進めば、日本の財閥史にとってだけでなく、日本の近代化、工業化に関する実証的研究水準の画期となるべきものである。また、旧帝国大学・旧高等工業学校に所蔵されている史料の調査も行なってきたが、京都大学、大阪大学、九州工業大学、九州大学で予算の許す限り史料の複写を行なった。これらもかなりの量に達するが、東京大学のみ学外者に対する複写を許可しなかったため、実証研究に利用できる形での史料入手はできなかった。遺憾とするところであった。 以上、史料の調査・整理・分析に大きな成果をあげ得たが、研究対象は今後数年におよぶ継続的調査・研究を必要とするほど巨大であり、その金体像の歴史的特質を実証レベルで提供することは一挙には無理があるため、順次研究成果を公表していくこととしたい。まずは、炭砿業、金属鉱山業、そして本社部門の経営内容を検討し、成果を発表する予定である。
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