平成2年度は、大きく分けて三つのことを実施した。第一は、日本企業の原価管理の実態調査である。具体的には、日本の第一部および第二部上場企業を中心に、約5百社強を業種に偏らないよう満遍なく抽出し、郵送によるアンケ-ト調査を実施した。アンケ-ト調査の内容は、会社概要、製品構成、目標コスト、機能分析、原価見積、コスト・テ-ブル及びCAD/CAMとの連動など40項目から成るものである。この結果は、学生の支援を得て、現在集計中である。アンケ-ト調査の集計結果は、横浜国立大学経営学部の雑誌『横浜経営研究』に発表する予定である。 第二は、これらのアンケ-ト調査を集計する過程で、研究対象として興味のもてそうな企業を中心に企業訪問し、日本企業に於ける原価管理の現状並びに問題点を目標コストに基づく原価企画と機能分析の側面から、徹底的に現状分析した。この結果一部を、学会誌『会計』に日本企業の原価管理ー現状と展望ーと題し、発表した。 第三は、こうした日本企業の原価管理の現状分析を実施している過程で新たな発見をした。それは日本企業の原価管理にとって新しい生産管理システムの導入と原価管理との関係も無視できないことである。したがって、新生産設備の導入と原価管理およびそれらの意思決定プロセスについて30項目にわたる質問事項を別建てで用意し、10社ほどこのテ-マについて企業訪問し、徹底的に日本企業の原価管理の状態を分析した。この結果の一部を、雑誌『原価計算』に新生産設備の導入と意思決定プロセスと題し、発表した。
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