平成3年度は、大きく分けて三つのことを実施した。第一は、平成2年度に実施した日本企業の原価管理の実態調査を、学生の支援を得て、完全に集計することができた。このアンケ-ト調査の集計結果は、『日英両国における原価管理の実態調査』と題し、横浜国立大学経営学部の雑誌、横浜経営研究第13巻1号に発表する事になった。 第二は、原価管理の実態調査を踏まえ、企業訪問を通じ、日本企業に於ける原価管理の現状並びに目標コストに基づく原価企画の現状を徹底的に調査・分析を試みた。この結果は、英国から出版する著書に反映させたいと思う。この分野の研究を通じ思いがけないことを幾つか学ぶことができた。そのうちの代表的なものは、タ-ゲット・ヴァリュ-という概念である。この概念は、所定の製品機能と価値を備えたうえで、時にはこれらの機能や価値を向上させながら、目標コストをいかに設定し、これを実現していくかという、原価管理上の目標コストの概念である。これは、一種の目標コストであるが、これは社内的に利用するのみならず、社外にもこの概念を適用し、原価管理をはかっている。この概念は、これから注目すべき研究課題ではないかと考えている。 第三は、ABCシステムと原価管理の関係について、研究を始めた点である。本来は、サ-ビス部門に関する機能分析の適用について研究するつもりであったが、この研究を進めているうち、ABCシステムのほうが、即効性があるように感じた。これについては、まだ研究を始めたばかりで、まとまったものはないが、一つの方向性として日本管理会計研究会の学会誌に投稿した。
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