研究概要 |
kを標数Oの代数閉体としLをk上の純粋超越拡大体,KをK上の2次拡大体とする。このときKの次元が1ならLは,いわゆる超楕円関数体として良く研究されて来た。我々はKの次元が2のときLをすべて分類することを目標にした。分類とは言っても体の範ちゅうではその目安がないから,Lを非持異モデルとする代数曲面Sの分類に帰することになる。まずLのモデルは双有理同値な曲面Fで有理曲面P^2の2重被覆であるものが存在する。逆にP^2の2重被覆Fの特異点消でSが得られるからP^2の分岐因子Cをなるべく特異点解消し易いものを選べると都合がよい。まず第1の成果として,Cの特異点は高々通常特異点に取れることが得られた。この結果Sの種々の幾何不変量をCの次数と特異点の重複度などを用いて表わすことができた。次にSはEnriguesー小平の分類表の中でどこのクラスに存在しているか問題となる。これについてはア-ベル曲面と超楕円曲面以外のすべてのクラスに亘って分布していることも判明した。さて一番多いのは勿論一般型のクラスであるが,ではその中で更にどのような場所を占めているか問題となる訳である。これについてはgeographyを研究することとなる。まだ完全には解けていないが,Cの次数がセカンドチャ-ンクラスに比らべて小さいときは,C_2/C_1^2はほぼ1/2であることは分った。なお思いがけない副産物として代数曲線論への応用が得られた。即ち平面曲線の種数公式を満すような数値の組を与えても,重複度が6以上の通常特異点のみを持つ曲線は必ずしも存在しないことが判明したのである。このことは重複度2の通常特異点のみを持つ場合は必ず存在するという古典的結果を見ると注目すべき現象であると思われる。
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