研究概要 |
3次元射影空間内の代数的な既約曲面をSとしたとき,余空間V=P^3ーSとSとを種々の方面から研究することを最終目標とした。そのためにはSの特異点解消を求め開3次元多様体Vの対数的小平次元を決定するという難関を突破しなくてはならない。まず次の量を定義してSを研究した:kを標数0の代数閉体としてLをk上の超越次数nの拡大体ととする。この時Lの非有理次数dr(L)を{dld=|L:k(x_1,…,x_n)|xiELでx_1,…,x_nはk上代数独立}の最小値として定義する。この時,もちろんdr(L)=1である必要十分条件はLが有理的ということである。とくに上記のSについて,即方n=2のとき,drを研究した。もちろんdr(S)とはS上の有理関数体k(S)をLとみて定義するのである。非特異なSについて次数をdとすると,まず dr≦dー1は判り,とくにd≦3なら dr=1もわかった。そこでd=4の時が問題となる。これはK3曲面である。よって当然dr≧2である。ほとんどすべて(すなわちgenericには)dr=3であることが証明できたが,例えばS上に交わらない2本の直線がのっている場合などではdr=2となることも得られた。後者はKummer曲面とよばれるものである。d≧5の時は一般型の代数曲面となる訳であるが,genericにはやはりdr=dー1になるであろうと予想されるが未解決である。さらにK3曲面に注目して,次の種々の事実も判明した:ピカ-ル数が1ならP^2上の6次曲線で分岐する2重被覆として得られる場合を除くとdr≧3である。またsingularK3曲面はdr=2である等。またア-ベル曲面,超楕円曲面はdr≧3であることもわかっている。
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