研究概要 |
(1)酒井は多様体の計量構造と位相構造に関連して、種々の幾何学的不変量の間に成り立つ幾何学的不等式について考察を続けている。特に2次元球面S^2上非負ガウス曲率のリ-マン計量に対して面積Area(S^2,g)と直径Diam(S^2,g)に関する等径不等式を取り扱った。A.D.AlexandrovはArea(S^2,g)/Diam(S^2,g)^2【less than or equal】π/2であり,等号成立は平担なユ-クリッド円板のdoubleの場合であると予想した。これに関してArea(S^2,g)/Diam(S^2,g)^2<0.985πを示した。最良の結果を得るためには(S^2,g)の計量gの対称化を考える必要があると思われる。そのために(S^2,g)を面積の等しい2つの円板Dに分け、境界からの距離の最大値d^*を考えて、等径不等式を回転領域の場合に帰着させようとした。特に(D,g)が実解析的であり、非負のガウス曲率を持ち、境界が凸の場合にArea(D,g)/(d^*)^2の評価を得た。これは境界からの距離関数のレベルとその長さの変化を詳細に調べることによる。 (2)初等幾何学でSteinerの定理と呼ばれる問題「3角形ABCの点Pに対してAP+BP+CPの最小値をとる点を求めよ」がある:LA,LB,LC<2π/3ならば内点PでLAPB=LBPC=LCPA=2π/3をみたすものが唯一つ存在しこれが最小値を与える。頂点のうち一つの角が2π/3以上ならこの頂点が最小値を与える。さて酒井は野田隆三郎・森本雅治との協同研究でこの問題をアダマ-ル多様体(完備単連結非正曲率多様体)のn(【greater than or equal】3)個の異なる点からの距離の和を最小にする問題に拡張して上記を一般 (3)最近のリ-マン幾何学の発展は目覚ましいものがあるが、それについて解説した適当な和書がなかった。そこでリ-マン幾何学における大域的な概念の解説と、特に比較定理と呼ばれる手法と、その曲率と位相,等同不等式とスペクトル幾何への応用について解説した書物を書いた。
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