研究概要 |
昨年度購入した住友電工のワ-クステ-ションUー300Tに,専用LSI48個を使った重力多体問題専用計算機GRAPEー3を接続し実効演算速度10Gflopsをマ-クした。これは世界最高速のス-パ-コンピュ-タを超えるものである。この豊富な計算パワ-を使って、楕円銀河の衝突実験を世界に類を見ないほどたくさん行った。その結果,次の2つのことが明らかになってきた。 まず、楕円銀河同士の衝突・合体でできたとする合体仮説で楕円銀河の力学的性質がうまく説明できることがわかった。この研究以前では,合体仮説では楕円銀河の力学的性質がうまく説明できないとする説が大勢を占めていた。しかし、その説が根拠にしていた数値実験は、粒子数が少なすぎること,初期条件の選び方に偏りがあったことなどがわれわれの大規模なしかもシステマティックな数値実験で明らかになった。また、その実験の過程で銀河の中心にある巨大ブラックホ-ルの存在を考慮すると、楕円銀河のコア半径と銀河の明るさの関係をうまく説明できることがわかった。 次に、銀河の衝突・合体過程は非線形な波・粒子個相互作用と位相混合の重ね合わせだけで説明できることがわかった。従来、銀河の衝突・合体ではviolent relaxationという一種の緩和過程が発生して銀河内の粒子はいわゆるLindenーBell分布に落ちつくと信じられてきました。しかし、数値シミュレ-ションはこの予測とは予盾する結果を与えていた。その理由は今まではっきりしなかったが、本研究で緩和とはまったく違う性質を持つ波・粒子相互作用と位相混合だけが起こっていることがわかったので、この理由も自明になった。
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