マゼラン雲で爆発した超新星(SN1987A)は、地球に近いこともあってニュ-トリノや電磁波の色々な波長帯での観測が行なわれてきた。X線やガンマ線での観測は、超新星の爆発時に大規模な物質混合が起こったことを示している。また、光度曲線の理論的な解析からも、水素が重元素からなる星の中心部近くまで入り込んでいることが示唆されている。このような物質混合を起こすもっとも有望なメカニズムとして、レイリ-・テイラ-不安定がある。本研究では、数値シミュレ-ションを行なって、この不安定が実際に大規模な物質混合を惹き起こすことを示した。 このような流体力学的な不安定を追いかけるためには、少なくとも軸対称2次元、できれば、3次元の格子点が必要である。また、リアルな星の内部で起こる爆発と、それに伴う衝撃波の伝播、及び接触不連続面をシャ-プに捕らえるには、非常に多くの格子点を用意しなければならない。われわれは、軸対称2次元(1025×1025)の仮定のもとで、以前の計算方法を改良し、計算精度を空間3次精度、計算スキ-ムをRoe法に変えて、少ない格子点でも十分な精度を確保するようにした。その結果、以前の方法に比べかなり精度の高い結果が得られた。 数値計算の結果は、爆発の初期の速度揺らぎを5%程度にとれば観測を説明する量の物質混合を起こすことができる。しかし、このように大きな速度ゆらぎを爆発前の星の対流層起源だとすることは難しい。今後の課題として、2次元軸対称の仮定を外した場合の3次元的効果、爆発のそもそもの球対称からのずれ、放射性同位元素の崩壊熱の効果など、を順次取り入れて、小さな初期ゆらぎからでも観測を説明するだけの物質混合を導けるかどうかを示す必要がある。
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