研究概要 |
彗星の赤外線スペクトルの波長10ミクロン付近に、2つピ-クの投射バンドが発見された。これは、結晶性オリビン粒子の熱放射特性と一致する(T.Mukai and C.Koike,1990,Icarus 87,180)。高温凝縮鉱物であるオリビンが,低温の彗星核中に存在することは、彗星の塵が、様々な環境で生成された鉱物種の集合体であることを予想させる。当該年度では、彗星オリビン粒子の起源に係わる課題を検討した。主な成果としては、 1。高温領域で生まれたオリビン粒子を基本構成粒子とした複合塵(porous aggregates)を、3次元モンテカルロ法で数値シミュレ-ションによって生成し、その構造をフラクタル次元を用いて表した。こうしてできた不規則塵が、太陽放射圧を受けて、外縁部の低温領域に移動し、彗星核を作ると予想した。そこで、こうした不規則形状塵に作用する放射圧を求める一般的手法を確立した(T.Mukai et al.1992,Astron.Astrophys.,in press)。真空基盤に、構成粒子が散在している様子を、平均誘電率を持った仮想球形で置き換え、ミィ理論によって散乱特性を導くこの手法は、簡便でかつ有効であることを示した。 2。不規則形状複合塵は、その構造からみて脆い。塵表面の静電荷は凸部に集中することを考慮して、彗星の塵が、静電破壊を受けている可能性を、ハレ-彗星の塵探査デ-タに基づいて示した(T.Mukai,1991,IAU Col.126,Kluwer,p.371)。 3。彗星の偏光観測結果が、不規則形状塵の光散乱で説明できることを明かにした(S.Mukai and T.Mukai,1990,Icarus 86,257,と.Mukai et al.1991,IAU Col.126,Kluwer,p.249)。 その他の成果も含めて、詳しい内容は、研究成果報告書にまとめた。
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