銀河の紫外放射スペクトルの進化を銀河の化学進化と整合的に計算する目的の第一段階として、円盤型銀河の紫外線源である若いOB型星の進化路を既に開発済みの種族合成プログラムに取り込んだ。これによって、円盤型銀河の放射エネルギ-の時間変化を紫外域から近赤外域に至るまで計算するシミュレ-ション・プログラムを完成させた。このプログラムの最初の応用として、ハロ-からのガス流入を経て形成されたと認識されている銀河円盤の放射スペクトル進化計算を世界に先駆けて行った。その結果、形成初期の銀河は非常に暗く、原始銀河の観測可能性は従来考えられていた以上に困難であることを明らかにした。第二段階として、紫外線源と考えられている年齢の古い水平分枝星や漸近巨星分枝星の進化路も種族合成プログラムに取り込み、楕円銀河の紫外線源を特定すべく研究を続行中である。これらの研究に基づいて、銀河の進化補正を具体的に考慮し、暗い銀河の観測からFriedmann宇宙モデルの密度パラメ-タΩ_0と宇宙項Λを同時に決定できるように従来の観測テストを拡張した。また、銀河の面輝度は、理論的に(1+z)^<ー4>で減少するため、赤方偏移の大きい銀河は観測限界より暗くなり、観測されない可能性が指摘されてきた。この選択効果を考慮して、暗い銀河のカウントから宇宙論パラメ-タを決定できる新しい理論的枠組みを構築した。特に、B_JR_FIK4バンドに於ける暗い銀河のカウントは零でない宇宙項の存在を強く示唆し、平坦かつ低密度(Ω_0〜0.1、Λ/3H_0^2〜0.9)の宇宙モデルと最も良く合致するという結論に達した。この結論は銀河形成以後は銀河の数が変化しないことを前提にしているが、仮に合体過程で銀河ができたとすると過去に於いて銀河の数は増加し前提が崩れるという批判がある。しかしながら、合体過程を逆に辿ると個々の銀河は小さく暗くなり、事実上の検出数は合体の有無にあまりよらないことを見いだした。即ち、合体仮説は、低密度宇宙という結論に変更を迫るものではないことを明らかにした。本研究によって、選択効果が最新の赤方偏移分布や銀河カウントの観測デ-タの解釈に重大な影響を及ぼしていることを指摘し、この効果を正当に考慮することで観測的宇宙論のパラドックスのいくつかが解決できることを明らかにした。
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