研究概要 |
平成2年度は以下の項目について重点的に研究を行った (1)宇宙背景輻射スペクトルの変形の説明 名古屋・バ-クレ-グル-プによって報告された3K宇宙背景輻射スペクトルの変形を説明するために提案されている不安定ニュ-トリノによる宇宙の再過熱のシナリオを詳しく調べ、シナリオがうまく働くために必要とされる質量・寿命を求めた。しかし、この問題はCOBEによる新しい観測結果が報告され、実際にはスペクトルの変形はほとんどない事が確認され逆に,次の項目で述べるように一般的に宇宙の再過熱が可能かという問題に論点が移った。 (2)宇宙の再過熱問題 COBEの観測によって3K宇宙背景輻射はむしろ非常によい精度でプランク分布に近い事が明らかになり、一般的に宇宙を一様に過熱するほどのエネルギ-源があったときに、それがCOBEの観測と矛盾しないかどうかが問題になった。そこで、一定のエネルギ-をもつphotonをある量だけ宇宙にそそぎ込んだときにそれが様々な宇宙背景輻射スペクトルにどう影響するかを定量的に調べ、観測と比較した。これによって、photonをそそぎ込む時期と量に強い制限が得られることが明らかになった。また、再過熱によって従来説明が困難とされた問題である現在宇宙に中性の水素が少ないことが説明できる可能性が示された。さらに、これによってエネルギ-源として質量を持ったニュ-トリノが崩壊してphotonを放出するような場合に宇宙の再過熱が可能かどうかを調べることができるめどがついた。
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