平成3年度においては、前年度から引き続き、宇宙初期において高エネルギ-光子を放出するような過程が存在した場合に宇宙の熱的な歴史がどの様に変更されるかということを中心に研究を行った。 一般に、高エネルギ-光子(Eγ〕SY.gtorsim.〔)20eV)を生成する過程が宇宙の再結合時(t【similar or equal】10^<13>秒)以後に起こると、放出された光子は中性水素を再びイオン化し、宇宙全体のイオン化率を大きく変えることが期待され、さらに、イオン化の際に、電子に与えられたエネルギ-はコンプトン散乱を通じて最終的には3K宇宙背景輻射スペクトルの変形をもたらすと考えられる。宇宙のイオン化については、非常に遠方のQSOのスペクトル観測から宇宙がある時期(Z【similar or equal】4ー5)から現在に至るまでほぼ完全にイオン化されていたことが知られており、イオン化をもたらす宇宙の再加熱過程の必要性が認識されている。しかし、このような過程は上に述べたように宇宙背景輻射の変形をもたらすが、そのような変形は観測されていない。そこで当研究では全ての観測を満足するような再加熱過程が可能がどうかを関与する輻射過程を考慮して宇宙のイオン化率・宇宙背景輻射スペクトルを計算し、観測と矛盾することなく宇宙を再加熱できることを示し、具体的なエネルギ-源として質量を持ったニュ-トリノのような粒子の崩壊が考えられる 他に、ニュ-トリノが質量を持っていると宇宙の暗黒物質となり得ることが知られているが、その場合に問題となるphase spaceからの制限が、ニュ-トリノの間に新しい力を導入することにより、回避できることを示した。また、非常に重い強い相互作用をする粒子が暗黒物質を担っていると木星型の惑星の固有の熱源となる可能性があり、実際、木星では期待される熱流量が観測と一致することを示した。
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