研究概要 |
原子核が高速回転すると非軸対称性が誘起されその非軸称性のために,ワブリング・モ-ドが低いエネルギ-状態として現われる。ワブリング・モ-ドは非軸対称性の力学変数ガンマによるガンマ振動モ-ドと強く結合すると考えられる。そのことを理解するために,渦なし流体模型を準古典的に取り扱い,その強い結合の仕方を調べてみた。その結果,非常に興味深い結果が得られた。その初段として,一般に孤立系で,実験室系の角運動量が保存されることを利用して,変数分離をし,3次元回転についての部分的量子化を行った。この手法を渦なし流体模型に応用し,内部運動と保存される角運動量ベクトル方向の回転運動から分離した。ここまでの結果はストラスブウルの国際研究集会で発表した。内部運動について,変形の大きさを固定し,ワブリング・モ-ドとガンマ振動モ-ドについて,古典軌道を解くとケプラ-運動やリサ-ジュのような極く限られた運動にしか見られない周期運動になっていることが発見された。この問題は量子論的に正解に解けるもので,準古典論との対応が明確にされると,ワブリングとガンマ振動の強い結合の様子がよく理解できるものと思われる。 原子核が高速回転すると,核種によって超変形状態が表われるが,ここでは変形整列が強いため回転整列が起こり難いが,擬軌道角運動量による二重項の出現のために,双対バンドが現われる。その研究のために巨大変形核内でのスピン軌道結合を正しく取り入れるべく,楕円座標を導入した。巨大変形ポテンシャルでの独立粒子運動の波動関数は,変数分離型の基底ベクトルで簡単に表現でき,微分方程式や行列要素が1変数の積分や結合方程式で解けることが明らかになった。数値計算は現在進行中であるが,従来の三次元調和振子の基底による計算よりは簡単になる。プログラムの完成次第具体的な核について計算を行う予定。
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