研究概要 |
1.スピン・アイソスピン・モ-ドの励起について 昨年に続き米国ロスアラモス研究所の実験グル-プと協力して、準自由散乱領域での(p,n)反応によるスピン・アイソスピン・モ-ドの研究を進めた。得られた実験結果を、色々有効核力を変えて再現を図った結果、バイオン交換力のもたらす強い相関が何らかの理由で抑えられていることが示唆された。 一方、実験結果から縦スピン応答と横スピン応答を引き出す従来の方法を再検討し、その問題点を指摘すると共により信頼性のある方法を提唱した。それはPhys.Rev.Cに発表される。 また、現在採用している反応の解析法の信頼性を調べるため、より基的的過程であるd(p,n)pp反応を平面波ポルン近似で解析した。スペクトルの形は再現できたが絶対値に問題が残った。 さらに応答関数の計算に当たって、従来計算上の都合で用いられていた核子間および核子とデルタ粒子間の相互作用に対するユニバ-サリティの条件を課すことなく計算を行えるようにした。 2.△アイソバ-励起について 昨年に続き、スカ-ミオンによってπ中間子と核子の散乱を計算することを試みた。スカ-ミオンには湯川相互作用が現れず、π中間子核子散乱振幅にボルン項が存在しないという困難は基的的には昨年までの研究で明らかになったが、π中間子と核子の湯川結合定数が従来の定義と微妙に違うなどいくつかの問題点について検討を加え、明解な解を得た。この方法をπ中間子光生成反応に適用するため、一次元の簡単な模型でボルン項が存在することを証明した。三次元についても概ね理解が得られた。 一方、QCDを光円錐上で解く試みのテストケ-スとしてシュヴィンガ-模型、非線形シグマ模型、グロス・ヌヴ模型などを研究した。ここで明らかになったのは光円錐上で特有の赤外発散を理論的に取り除く方法が知られていないことであった。そこで通常の座標では結果が良く分っているQEDを取り上げ、赤外発散の問題点を追及する研究を始めた。
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