研究概要 |
1.スピン・アイソスピン・モードの励起について (1)従来より応答関数抽出に当たり、重陽子を基準に取り、重陽子ではスピン縦応答と横応答が等しいと仮定されていた。我々はd(p^^→,n^^→)2p反応について終状態相互作用も考慮して両応答関数を求め、励起エネルギーに応じて両者がかなり異なることを指摘した。またその結果を用いて微分断面積のスペクトルを計算しほぼ実験を再現できた。 (2)本年度初めて報告されたロスアラモスの^<12>C,^<40>Ca(p^^→,n^^→)の微分断面積および偏極移行量Dijの実験結果をDWIAで解析した。Dijに対し光学ポテンシャルの虚数部の影響が顕著であることが分った。残念ながら断面積の理論値は実験値をかなり下まわった。特に高エネルギー領域での過小評価が大きく、多重散乱効果の寄与を示唆している。 2.△アイソバー励起について (1)前年度までの研究で核子のソリトン模型におけるπ中間子核子湯川相互作用を導出する量子化法を完成したので、この方法を別の角度から検証するために光子によるπ中間子生成反応を調べた。量子化されたハミルトニアンに電磁場を外場として導入し、π中間子生成反応振幅を摂動理論で計算した。量子化ハミルトニアンには湯川相互作用があらわに現れないが、カラーの自由度の逆数展開では高次となるπ中間子核子線型結合とソリトン光子結合によってπ中間子生成反応のボルン項を厳密に再現するのに成功した。 (2)ゲージ場の理論を取り扱うのに、物理的な自由度を失わずかつ連続極限の曖味な点を避ける方法として、有限の箱の中で周期的境界条件を課すことによって量子化する場合に生ずる様々な問題について考察した。ワイルゲージのハミルトニアンから物理的でない変数をユニタリー変換を用いて除去する方法をとった。ゼロモードが重要な自由度として残る量子化ハミルトニアンが得られた。
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