研究概要 |
クォ-ク交換と中間子交換を融合した模型による重粒子間相互作用の研究の発展として,この模型も含めていくつかの模型で存在が予言されているHダイバリオン(ストレンアネス-2,スピン・パリティO^+)と核子との相互作用を調べた。Hダイバリオン探索の実験では原子核内での生成が予想されるものも多く,また,いわゆる2重ハイパ-核とH・原子核束縛状態との関連を明らかにするためにも,Hの原子核内での振舞いを知る必要があり,HーN相互作用はその基礎となるからである。結果はクォ-ク交換による短距離斥力と中間子交換による中距離引力の組合せで,全体として弱い引力となることがわかり,現在,それをもとにして,原子核内でのHに対する平均ポテンシャルを計算している。この研究は,矢崎,清水が大学院生(坂井)と学振外国人研究員Buchmann博士の協力を得て行なった。論文はNucl.Phys.Aへの掲載が決定している。一方,中間子と重粒子の相対論的複合模型については,通常の4体フェルミ相互作用を含む南部ーJonaーLasinio模型を拡張し,U_A(1)アノマリ-の効果を現象論的に記述する6体フェルミ項を含め,中間子と重粒子を統一的に記述する模型の構築を試みた。6体フェルミ項の導入により,平均場近似で重粒子の解が存在することがわかり,観測されている擬スカラ-中間子9重項と重粒子8重項および10重項の性質を大まかには説明する模型を作ることに成功した。この研究は,矢崎とベンツが,大学院生(加藤)と理化学研究所特別研究員田中博士の協力を得て行ない,加藤の学位論文として提出された。学位論文の審査も最近終了し,合格となっている。論文はNucl.Phys.Aへ投稿する予定である。
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