モンテ・カルロ法を用いた長時間計算機実験での成果は次の通りであった。1990年度は'tHooftが提唱したabelian projectionをlattice上のSU(2)gauge theoryで定式化し、種々のgaugeで物理量の振る舞いを調べた。maximal abelian gaugeの場合にWilson LoopsとCreutz ratiosとstatic potentialを測定したところabelian dominanceの兆候を示す興味ある結果を得た。1991年度は1)maximal abelian gaugeーfixingの精度を向上させる改善をし、いわゆる“Gribov"ambiguityが存在することを確認した。2)gaugeーfixingの不定性による誤差を評価しつつ、種々の物理量の測定を行った。その結果がabelian dominanceを示していることを確認した。monopoleから定義される2種類のorder parameterを発見した。monopole currentの時間空間成分の差や、全てのmonopole currentの長さの和に対する最大のmonopole currentの長さの比は、monopoleに関連した新しいorder parameterとなることを発見し、monopoleが閉じ込め機構に関与していると考えられる。3)Cooling法を用いて、有限温度系では閉じ込め機構に関係しているのはextended monopoleであることを確かめた。monopole fieldのFourier transformationを行いmomentum spaceでの振る舞いを調べ、閉じ込め相で多くのmonopoleはground stateにあることを発見し、monopole condensationと考えられる結果が得られた。4)SU(3)についてはpreliminary dataとして、first order deconfinement phase transitionと考えられる結果を得た。 解析的にQCDの赤外有効理論を用いてハドロンの性質を調べる研究の成果は次の通りである。1990年度は、staticなフォ-ク対をいれたときの真空のエネルギ-変化、つまり静的なメソンのポテンシャルを、赤外有効理論から導かれる運動方程式の古典解を数値的に解くことで求め、SU(3)での閉じ込め相の真空が第一種と第二種の境界付近のデュアルな超伝導状態らしいことがわかった。また、ポテンシャルは、リニア-タイプとユカワタイプでよく表されることがわかった。1991年度は静的なフォ-クを三個いれたバリオン系に拡張し、一般の場合のポテンシャルを求める事ができた。その結果は、バリオンのエネルギ-は、絞られた領域のみに集中しており、従ってストリングの長さで大体決まる事がわかった。有限温度のQCDを、赤外有効理論で、DolanーJackiwの有効ポテンシャル法によって調べ、SU(2)では二次の、SU(3)では一次の閉じ込め・非閉じ込めの相転移が存在している事がわかった。
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