本研究の主な目的は、エニオンガスの統計力学を研究し、ボソン系やフェルミオン系との違い、また高温超伝導体のモデルとして適当かどうかを明らかにすることにあった。そのためにエニオンガスの状態方程式を詳しく調べ、Virial展開において、3次のVirial係数を求めることをひとつの目的とした。現在3次のVirial係数を、摂動の一次、すなわち統計性を変える項の係数による展開の一次まで求めたが、次年度は3次の組み紐群を適切に取り入れた非摂動計算を行なう予定である。なお本年度は、位相幾何学の研究者と議論、意見交換を行なうことにより、組み紐群とその物理学(特にトポロジカルな場の理論や完全可解なモデル)への応用について、十分な知識を得た。 また、ChernーSimons系における渦糸の構造を研究するために、一般にトポロジカルに自明でないバックグラウンドと結合したフェルミ場を考え、この系の自由エネルギ-を熱核を用いて書き、そのプロパ-時間による展開を開発した。この方法により与えられた系の自由エネルギ-のGinzburgーLandau展開は、任意の次数まで機械的に行なうことができるようになった。今年度この手法を、ポリアセチレンにおけるソリトンと、通常の超伝導体における渦糸に応用した。その結果この方法は比較的簡単な計算でソリトンや渦糸のプロファイルを与えることを見出した。次年度はエニオンガスGinzburgーLandau展開とChernーSimons系における渦糸に応用する。
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