研究概要 |
中高エネルギ-重イオン核反応の研究の課題:フェルミエネルギ-領域とその近傍において,クラスタ-生成反応の定量的研究を行い,実験デ-タ-の見事な再現を得た。この研究には,量子分子動力学(QMD)と反対称化分子動力学(AMD)の2種類の微視的シミュレ-ションを用いた。これらの微視的シミュレ-ションは,生成されたクラスタ-の長時間の統計的崩壊過程を記述とすることは不可能であるので,生成クラスタ-の多段階の統計的崩壊の計算を蒸発模型を用いて行った。QMDによって解析されたのは,35MeV/uの ^<14>N+ ^<12>C反応と44MeV/uの ^<40>Ar+ ^<27>Al反応である。AMDは今年度,この研究代表者がその大学院生の共同研究者と共に開発に成功した新しい微視的シミュレ-ションの理論枠組である。波動関数の時間発展を記述するので,穀効果を含む量子力学的効果が扱える。量子力学的な微視的シミュレ-ションの実用化されたものはこのAMDが初めてである。AMDを用いて解析されたのは,28.7MeV/uの ^<12>C+ ^<12>C反応のクラスタ-生成の全断面積である。非常に多数の核種の実験デ-タ-がすべて見事に再現された中で,特筆すべきはα粒子の大きな断面積の再現であって,AMDが穀効果を記述し得る枠組であることによって初めて達成された理論成果である。その他に入射核破砕片のスピン偏極の研究を進展させて,多段階統計崩壊の効果を取り入れることと,QMDによる扱いからAMDによる扱いへと精密化させる研究とをすすめている。 組み替え反応の研究の課題:軽い核の全反応断面積を,虚数ポテンシャルを導入せず,多数のチャネルを陽に結合した計算で再現する研究計画を,今年度は6核子系を中心に追求した。擬重陽子チャネルを2つ以上取り入れる計算に伴う数値的問題を解決する手法につき研究が進展させられた。
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