研究概要 |
中高エネルギー重イオン反応の研究: 反対称化分子動力学(AMD)という量子力学的な微視的シミュレーション理論の建設に前年度成功したので,それを用いて重イオン反応の解析を行った。 殻効果が力学過程に自動的に取り入れられている量子力学的理論は、国際的にもAMDが始めてのものであるので,その本格的展開が強く要請されているからである。前年度は,28.7MeV/uの^<12>C+^<12>C系の生成クラスターの全断面積について研究し,理論と実験との見事な一致を得た。 そこで,本年度は,生成クラスターの運動量分布の研究を行い,残留相互作用の衝突項に多体効果を導入するならば実験を良く再現することを示した。 この研究においても,生成クラスターの長時間におよぶ統計的崩壊過程も正しく取り入れた計算を行った。 現在は更に,運動量分布を特徴付ける「流れ」の大きさが,核子,重水素,三重水素,3He,4Heにつき各々実験データが最新情報として得られているので,理論による再現を試みて,核物質の状態方程式に関するより確定的な結果を得ようとして研究を進めている。 AMDを用いた研究としてはその他に,入射核破粋片のスピン偏極の生成の力学機構の解明に向けて成果をあげつつある。 従来の古典力学的枠組の量子分子動力学を用いた研究としては,反応の動力学的段階と統計崩壊の段階との境界の時間についての研究を行い興味深い成果を得ることが出来た。 組み替え反応の研究: 軽い核の間の反応での全反応断面積を,虚数ポテンシャルのような現象論的要素を導入することなく,多数のチャネルを陽に結合した計算で再現しようとする研究計画を,前年度に引き続き行なった。 分解反応の過程をとり入れるには擬粒子チャネルの方法によっている。 前年度に続き主として6粒子系の計算の精密化に取り組み,実験と対応する良い結果を得た。
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