研究概要 |
今年度の研究実績は次に二項である。 1.弦の理論に特有な性質として“標的空間双対性"というものがある。これは,例えば半径Rのト-ラスにコンパクト化した弦の理論の物理が実は,半径1/Rのト-ラスにコンパクト化したものと全く同じであるという性質で,この双対性変換R→1/Rは,d次元ト-ラスの場合,O(d,d;Z)まで拡張されることが知られている。私はB.Zwiebachと共同で,この弦の顕著なO(d,diZ)双対性が,本質的には弦の場の理論のゲ-ジ対称性として含まれていることを明らかにした。これを示すために,先ず,弦の場の理論でどの座標が背景場に依存しない普遍量であるのかを明確にし,その上で弦のvertexの背景非依存性を証明した。次に双対変換を引き起こす,弦の場の同次変換を同定し,双対変換でつながる背景場上の弦の物理と同等性を示した。この変換は背景場を変えるので未だ対称性変換でないが,これと同時に“dilatonーlike"状態の凝縮に相当するC数場シフトを行なうと,その合成変換が弦の場の理論の作用を不変に保つことを示すことができる。最後に,この対称性変換が,座標軸の置換変換を除けば,ゲ-ジ変換の特殊なものであることを証明した。 2.昨年度,我々は東島ーMiranski近似のSchwingerーDyson(SD)方程式およびBetheーSalpeter(BS)方程式を解いて,QCDに於けるπの崩壊定数f_πや,Pメソンの質量など,驚く程良い値を得た.しかし遂最近,東島近似が実はカイラルWardー高橋(WT)恒等式を破っている事が発見された。私は,M.Mitchardと共同で,running結合定数の引数にgluon運動量を用いれば,カイラルWT恒等式を満たすこと,さらに,Ladder近似とconsistentにするには,ゲ-ジパラメ-タを運動量の関数にする非局所ゲ-ジをとる必要がある事を明らかにし,以前の数値結果は余り変更を受けない事を示した。
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