セリウムの金属間化合物CeRuSn_3は約0.5Kで1.6J/K^2.molの巨大な電子比熱係数を持つ立方晶化合物である。この値は代表的な重フェルミオン化合物であるCeCu_6に匹敵しており興味深い化合物である。この化合物の1K以下における帯磁率と比熱測定の結果、反強磁性スピン相関による帯磁率の減少と電子比熱係数C/Tの減少を0.5以下で観測している。これらの低温相を明らかにするため希釈冷凍機温度において3.5Tまでの磁場中で比熱測定をストイキオメトリ-のCeRuSn_3及びオフストイキオメトリ-CeRuSn_<2.91>の二種類の試料について行なった。 1、CeRuSn_3:磁場を加えた場合、その増加と共に比熱の1K以下の部分が抑制され、かわりに高温側が増加する。しかし磁気モ-メントをもつ系で見られるシヨットキ-型にならない。電子比熱係数C/Tについて見れば、零磁場中で観測されたピ-ク値は磁場を加えると磁場の増加と共に急速に減少し0.6J/K^2.mol程度までになるが2.5T以上ではその変化は小さい。0.1K以下の低温部分で、磁場の増加と共に急速に増加する比熱を観測した。これは大きな内部磁場によって誘起された核比熱からの寄与とおもわれる 2、CeRuSn_<2.91>:わずかにストイキオメトリ-からずれたこの試料は零磁場の1.2Kに反強磁性転移と思われる比熱のピ-クしめす。しかし、そのピ-ク値は3.3J/Kmolであり、エンロピ-値はスピン1/2の系のRln2の約1/3と小さい。したがって、スピン系の一部がクエンチしていることが考えられる。さらにこの比熱のピ-クはわずか0.5Tの磁場を加えても消失し、常磁性が回復しシヨットキ-型比熱になる。 このようにCeRuSn_3系はストイキオメトリ-のすぐ近傍に磁気秩序相を持っており、近藤効果と磁気相互作用との係わりがこの系の物性を複雑にしている。
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