シリカエアロジェルの試料作製時の環境(PH:ペ-ハ-)を変えると、試料中に励起されるフラクトンの性質が変わることを我々は以前に報告している。そこで、この原因を探るため、PH7、7.5、8の環境下でシリカエアロジェルの試料を作製し、フラクトンの挙動をラマン散乱で見ることにした。試料の方は簡単に作製できたが、北海道大学にある5パスのブリルアン分光器(Burleigh RCー110:周波数的にはラマン領域であるがブリアン分光器を使用しなければ精密な実験はできない。)では、後方散乱ということもあり弾性散乱が非常に強く、再現性のある散乱スペクトルが得られなかった。そこで、3+3パスのサンダ-コック流のタンデム型分光器の導入を図ることにして、一時実験を止めることとした。そのかわり、テ-マは変わるが「βーBiNbO_4のブリルアン散乱」を行なうことにした。 βーBiNbO_4は、室温で三斜晶系をP1に属する結晶である。この物質に関して報告されているデ-タは、あまりなくX線解析、ラマン散乱、誘電率などだけである。誘電率の測定から、470℃と562℃で相転移の可能性があることが指摘されている。しかしながら、相転移の種類や室温相を除く他の相の空間群は、現在のところ不明である。今回我々は、この結晶の90度散乱ブリルアン散乱スペクトルを観測し、縦波音響波に対する弾性定数を決定した。なお弾性定数の算出時には、βーBiNbO_4の三斜晶系は、α【approximately equal】γ【approximately equal】90゚であるので、単斜晶系で近似した。また縦波音響波を純粋縦波音響波と近似した。最小自乗法で求めた弾性定数は、10^<10>dyn・cm^<-2>の単位で、c_<22>=225、c_<33>=は132そして、c_<23>+2c_<44>=204となった。この測定結果は1992年3月30日の日本物理学会にて発表される。
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