平成2年度、我々はシリカエアロジェルのラマン散乱と中性子散乱を行い、その成果をPhys.Rev.Lerrersに報告した。内容の概略は次の通りである。PH7とPH8.5の環境で、シリカエアロジェルの試料を作製した。両試料において、それぞれのフラクタル領域にて得たラマン散乱と中性子散乱の結果を比較することにより、約10GHzを境に高周波側にスカラ-・フラクトンが、そして低周波側にベクトル・フラクトンが存在することを実験的に発見した。動的フラクタル構造を特徴づけるスカラ-・フラクトンのフラクトン次元とベクトル・フラクトンのものとをそれぞれd^^=sとd^^=bとで表現すると、PH7の試料では、d^^=s=1.3、d^^=b=2.2またPH8.5の試料では、d^^=s=0.9、d^^=b=1.7なる値を得た。これから、フラクトン次元はPH依存性があり不変的な物理量ではないこと、またd^^=s<d^^=bなる関係はPHに依らないことを結論づけた。 平成3年度は、PH依存性をより細かく知ることを目的に、PH7、7.5、8.0、8.5の試料を作製した。ところが、北海道大学にて使用している、5パスの分光器(Burleighー110)では、弾性散乱が大きくフラクトンが観測できないことが判明し、この研究の1時停止を余儀なくされている。平成2年度の上記の論文で使用したと同じ型の3+3パスのタンデム型分光器が新たに導入される予定であるので、これを待って実験を再開することにする。その間「βーBiNbO4のブリルアン散乱」を行なうことにした。ブリルアン散乱で、この結晶のa※回りのブリルアンスペクトルを取り、弾性定数を決定する実験である。この成果については、平成4年の日本物理学会春の年会にて発表した。
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