研究概要 |
極低温及び強磁場の下で使用可能な温度素子の開発を目的として、本年は、更に38個の試料のZrーNスパッタ膜について、磁気抵抗、電気抵抗の温度変化、表面弾性波の音速を測定し、その基礎物性に関する知見を得た。本年度に明らかになったことは、以下の通りである。 (1)ZrーNの分類に関して:ZrーN薄膜の物性が、ヘリウム温度と室温における電気抵抗の比によって分類できるという規則は、新たに作製した試料についても成り立つことが判った。 (2)電気抵抗の温度変化の普遍的振舞い:ZrーNを温度計として用いる場合の温度較正関数の見つけることは、単に応用の面のみならず、物質の基礎物性を探る点から重要である。前年度では、領域IとIIに属する膜はそれぞれ3次元と2次元の弱局在の理論で示される温度変化を持つことを明かにしたが、そこで求められるパラメ-タの検討から、単純な弱局在理論では不十分であることが明かにされている。本年は、一般化された表式としてパワ-則σ=σ^*+A(TーTo)^γ を仮定し、各パラメ-タ間の関係を調べた。その結果、A,γと室温での電気伝導度σ_<RT>の間には相関があることが判った。 (3)表面弾性波音速の異常:前年の結果から、ZrーNの物性がアンダ-ソン局在から来ることが判っている。局在状態を音波で見る目的で、表面弾性波の実験を行った。その結果、弱局在領域の試料及び強局在領域の試料に、その特徴的な温度に対応する処で音速の異常を観測した。また、極低温領域で、強局在の試料のみに音速の軟化現象が観測され、理論との比較をおこなった。これらの結果は、温度計の開発のみならず、局在状態をエネルギ-準位の立場から研究する有力な手ががりになるものと考えられる。
|