1.測定装置の整備…… 緩和法熱量計の超低周波領域での精度向上のために、熱浴の温度制御を交流駆動のホイ-トストンブリッジを用いる方式に変更することによって温度制御の安定度を改善した。この際、備品としてロックインアンプおよびダイアル抵抗器を購入した。また、誘電率との同時測定の際、インピ-ダンスブリッジの出力をコンピュ-タに取り込むため用いるデジタルマルチメ-タを備品として購入した。 2.NaNO_2についての測定…… 緩和法熱量計の改良が予定より早く完了したので、NaNO_2についてすでに得られていた緩和法による予備的測定の結果の確認及び精密化を目的として、まず緩和法による再測定を行なった。その結果、不整合相における緩和は初期の測定で観測されていたよりもさらに長時間にわたって起きていることが明らかとなった。この事は併せて行なった熱容量と誘電率の同時測定で確認された。特に、この同時測定の結果は、熱容量と誘電率における緩和の進行の様子がよく一致しており、それらが同一の原因により生じていることを裏付けるものであり重要である。同時測定の結果については日本物理学会(90年秋)で口頭発表を行なった。またこれに関連した議論を同じく日本物理学会(91年春)で発表の予定である。 3.その他の物質についての測定…… NaNO_2以外でも不整合相をもつ他の物質において同様な熱的緩和現象が観測される可能性があるが、緩和時間が適当な長さである必要である。今年度申請者らはリン脂質膜の主転移点近傍における熱緩和の測定を行ない、DSPCにおいて100秒程度のタイムスケ-ルで進行する緩和がみられることを見いだした。この緩和の起源その他詳細についてはまだ不明であるが、この系では鎖の部分を変えることにより緩和時間をコントロ-ルできるものと期待され、今後研究を進めていく予定である。
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