研究概要 |
パ-コレ-ション磁性体はフラクタル構造をとる典型物質である。希釈反強磁性体の相転移及び励起状態を、スピン間結合形態のフラクタル性の概念で新しい展開を試みることは重要かつ緊急の課題である。本研究では、パ-コレ-ション近点傍の希釈反強磁性体の動的性質の実験研究を,次の2点に焦点をしぼって、中性子散乱法及び磁化測定によって行なった。はじめに、パ-コレションネットワ-ク上において、混沌とした無秩序状態から秩序が形成されていく過程,また,その逆の過程を中性子散乱及び磁化の実時間測定によって観測することに初めて成功した(実験試料は希釈2次元イジング反強磁性体Rb_2Co_<0.6>Mg_<0.4>F_4)。この研究で,有限な大きさをもつミクロなドメインのサイズとマクロな磁化との間の関係式を、フラクタル格子の自己相似性を用いて導いた上で、磁化の時間変化の精密測定によってドメインサイズの時間変化則を詳細に検討した。ランダム磁場効果を利用して行なったこの研究により、秩序形成過程におけるパ-コレ-ション.クラスタ-のドメイン反転に伴うダイナミクスは熱活性化エネルギ-によって支配されることを明らかにした。次に、パ-コレ-ション点近傍のハイゼンベルグ磁性体における磁気集団励起を明らかにする目的で中性子非弾性散乱実験を行なった。RbMnF_3を非磁性Mg原子で希釈し、かつ、磁性原子濃度を系統的に変えた試料による中性子散乱エネルギ-スペクトルの波数依存性の群細な検討を行なった。これによって、希釈ハイゼルベルグ磁性体の長波長領域のスピン波は、短波長領域では過減衰型の振動に連続的に移行すること、さらにまた、中間波長領域では波長依存性のない局在モ-ドが新たに出現すること、等を見い出した。後者の新しい局在モ-ドの物理的起源については今ところ明らかではなく、さらに詳細な実験を継続中である。
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