希土類元素原子、遷移元素を含む系において、原子内の電子間相互作用を正しく考慮する事により、内殻光電子放出・光吸収スペクトルの計算を行い、予想される実験結果の予言・得られている実験の理論的解釈を行った。以下にテ-マ別に得られた成果を述べる。 1。CeRh_3B_2の電子状態と内殻光吸収の線・円二色性。強磁性体であり結晶構造が六方晶系のこの物質は、C軸方向のCe原子間距離がC面内のそれに比べ著しく小さい事から、C軸を極軸としたときの4f軌道の方位量子数m=Oの状態への電子の優失的占有が主張されていた。我々はまず4f軌道とまわりの軌道の間の混成を考慮した模型に基ずき、Ceの3d及び4d内殻光吸収スペクトルにおける線二色性(C軸方向に平行垂直な直線偏光による吸収の差)を計算し、それがこれまでの主張を検証する有力な方法である事を示した。さらに磁化がC軸方向を向いている仮定して、同スペクトルにおける円二色性(左右の円偏光による吸収の差)を計算し、それが結晶場の大きさの違いによるスピン磁気モ-メントと軌道磁気モ-メントの相対的寄与の変化を敏感に反映する事を示した。磁化がC面内を向いているとしたときの、同様な計算を計画している。この研究がきっかけとなり、実験が行なわれ出している。 2.強磁性Niにおける2p内殻光吸収の磁気円二色性と電子状態。最近測定された結果を、1。と同様の模型に基ずき考察した。その結果、Niの1原子当りの全磁気モ-メント約0.6μ_Bのうち、軌道磁気モ-メントの寄与が約0.07μ_Bである事、Ni原子の電子状態は3d^<10>、3d^9、3d^8配置の重ね合わせで記述できそれぞれの重みは20%、60%、20%程度である事を見出した。 3。Sm化合物の3d及び4d内殻光電子放出。Sm^<3+>、Sm^<2+>についてスペクトルを計算し、最近の実験とよく対応している事を示した。
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