研究概要 |
〈Cu_2Sb型Mn化合物の電子帯構造と磁性〉 Cu_2Sb型結晶構造をもつ遷移金属化合物では対称性の異なる2種の金属原子サイト(M(I),M(II))があり、単位胞には金属原子4個(M(I)サイトが2個、M(II)サイトが2個)とSb又はAs2個が含まれている。 Self‐consistent APW法によりMn_2Sbのフェリ磁性相、MnAlGe,MnGaGeの強磁性相でのバンド計算を行った。上向きスピンバンドと下向きスピンバンドの状態密度の形は非磁性状態のものと大きく異なり非磁性バンドのrigidな分裂として表すことはできない。Mn_2SbではM(II)サイトを占めるMnが主成分のバンドは大きなスピン分裂を示し、M(I)サイトのMnから作られるバンドの分裂は小さい。バンド計算から得られた全磁気モ-メントおよびM(I),M(II),Sbサイトのモ-メントの値は、1.76μ_B,‐2.11μ_B,3.65μ_Bで実測値との一致は極めてよい。MnAlGe,MnGaGeでは、Mnのd軌道による部分状態密度のスピン分裂の様子はMn_2SbのM(I)サイトのMnからの寄与を表わす部分状態密度のそれと似通っている。計算で求めた磁気モ-メントと測定値との一致はよい。計算で得られたMn_2Sb,MnAlGeの状態密度は最近の光電子分光、逆光電子分光測定で得られたスペクトルとよい対応を示している。 さらにMn_2Sb,Mn_2As,Ge_2Asなどが示す異なる磁気配列の起因を明らかにする目的で電子帯構造の特微を考慮したハバ-ドハミルトニアンに基づいて非磁性状態の不安定性の議論を現在進めつつある。 Fe_3Pt,Fe_3Pd,FePt_3,FePtの電子帯構造 Self‐consistent APW法によりこれらの非磁性状態、FePt_3の反強磁性状態、Fe_3Pdの強磁性状態のバンド計算を行った。反強磁性FePt_3のバンド計算は初めての試みで、Feサイトの磁気モ-メントは3.2μ_Bで実験値とよい一致を示した。Ptサイトには胎どモ-メントは誘起されない。
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