本研究の目的は、計算機シミュレ-ションによりク-ロン液体の表面について調べ、表面近傍での密度変化、相関関係、表面エネルギ-などについて正確な情報を得るとともに、シミュレ-ションで得られる粒子配置のミクロ構造の情報から上記の諸量の解釈を行なうことである。更に、シミュレ-ションの結果と近似理論との比較検討を行なうことにより、これまで提案されている種々の近似の妥当性を検証し、より進んだ近似理論を展開するための指針を得ることを目的としている。 まず、ク-ロン液体の最も単純化されたモデルである一成分古典プラズマの表面についてモンテカルロ法によるシミュレ-ションを行なった。平面表面をシミュレ-トするためスラブ状の系を用い、スラブ面に沿う2次元方向には周期境界条件で基本セルを無限に拡張する方法を用いた。これまでの研究でク-ロン相関の増加とともに顕著になる密度分布の層状構造、表面結晶化の現象(温度を下げる(ク-ロン相関が強まる)と全系が結晶化するより前にまず表面層のみが六万格子状に結晶化する現象)など、ク-ロン系表面に特有な現象を見いだし、その解析を行なった。さらに、これらの現象が系のサイズやセルの形状にどのように依存するか調べている。同時に、一成分古典プラズマ表面の近似理論とシミュレ-ションの結果とその比較検討を行なっている。 また、現実の液体金属表面のシミュレ-ションを行ない、伝導電子の遮蔽効果が一成分プラズマについての結果をどのように修正するかを調べるため、まず、イオン間の有効相互作用を擬ポテンシャル法で求め、イオン系の分布のみをシミュレ-ションで取り扱う方法で遮蔽効果の影響を調べた。現在、イオン系と電子系の状態を同時にシミュレ-ションで取り扱うCarーParrinelloの方法の適用について検討を進めている。
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