液体金属・合金や溶融塩など、いわゆるク-ロン液体の表面の理論的研究は、表面における異種電荷の分布のずれの効果など、ク-ロン相互作用の効果の適切な取扱いが困難であるため、その発展は遅れており、未解決の問題点も多く残されている。本研究は、モンテカルロ法および分子動力学法によるク-ロン液体表面のシミュレ-ションを行い、表面近傍の密度分布、相関関数、表面張力などの計算を行なうとともに、シミュレ-ションでしか得られない粒子配置のミクロ構造の情報に基づいて、上記の表面物性に関する物理量の解析を行なうことを第一の目的とした。また、シミュレ-ションの結果と近似理論とを比較検討し、これまで提案されてきた種々の近似の妥当性を検討し、より進んだ近似理論を展開するための指針を得ることを目指した。これらの目的は完全には達成されていないが、本研究で行なったシミュレ-ションにより、ク-ロン液体の典型である古典プラズマにおける表面結晶化(温度を下げると表面から結晶化が進行し始める現象)など、ク-ロン液体表面に特有の現象が見いだされるなど、重要な成果を得ることができた。また、現実のク-ロン液体である液体金属や溶融塩の表面の研究を行なう準備として、バルクにおけるこれらの系の構造のシミュレ-ションによる研究を行なった。さらに、イオン系と電子系を同時に取り扱う最新の第一原理シミュレ-ション(CarーParrinello法)の表面研究への適用を目指して、バルク系におけるこの方法による研究も発展させた。
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