研究概要 |
近年、Fe基及びCo基アモルファス磁性合金で見出されたスピングラス相や1800Kを越えるキュリ-温度出現のメカニズムを明らかにするために、筆者が提出した環境効果の有限温度磁性理論を用いて数値計算を実行した。その結果、アモルファス金属磁性に関する次の様な新しい知見を得た。 1.従来の常識を破り、構造不規則性が最も基本的な強磁性体であるFe,Co,Niの磁性を全く変えてアランとを初めて理論的に明らかにした。即ち、アモルファスFeでは純粋な構造不規則性のみによって遍歴電子スピングラスが実現されること、アモルファスCoでは構造不則性のために状態密度のメインピ-クが低エネルギ-へシフトするので強磁性が強められ、キュリ-温度が400K程度増大すること、また同じ理由でNiの強い強磁性が壊れることを明らかにした。 2.アモルファスFe付近に現われる構造不規則型遍歴電子スピングラスの様相を詳細に調べた。その結果、(1)d電子数を変化させる時、スピングラス相と強磁性相の間に強磁性クラスタ-を伴なうクラスタ-スピングラスの領域が存在する。(2)スピングラスと強磁性の間にリエントラントスピングラスが現われることを見出した。理論結果は、アモルファスFe_<92>La_8及びFe_<88>La_<12>合金の圧力効果やFeーZr系の磁場効果のデ-タを半定量的に説明する。(3)特に、リエントラントスピングラス転移に伴なう巨大強制体積磁歪が遍歴電子スピングラスに特有の現象であることを見出した。
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