1 筆者の相対論的な結合方程式による研究により、monopoleタイプの長距離相互作用が発見され新たな問題提起がなされたが、非相対論的な場合のク-ロン相互作用とは本質的に異なり、この長距離部分には電子座標をimplicitに含む。これは純枠に相対論的に効果に起因しており、ゲ-ジ不変性の破れに関連している。これに対して、ベルリンのEichler教授の協力を得て、歪曲波基底に基づく緊密結合法を開発し長距離相互作用の問題を解決した。過程によっては、factor2もの変更をもたらすことが見いだされ、いままでの相対論的な計算の見直しの必要性が指摘された。 2 緊密結合法等の高精度計算が不可能なエネルギ-領域では、Distortedーwave法が広く使われているのは非相対論的な場合と同じであるが、相対論的な場合の特殊性を十分に考慮して適用することが必要である。しかし現実には、非相対論的な場合の手法がそのまま流用されていることが多い。近年、Deco達によって持ち込まれたsymmetric eikonal法もこの類であり、物理的な妥当性の吟味の無いまま広く使われていた。これに対して、非相対論的な極限を解析的にとることにより、symmetric eikonal法には非物理的な異常なspin flipが含まれていることが見いだされた。 3 筆者の開発した相対論的な緊密結合法は、きわめて信頼度の高い計算法として地位を確立したが、超相対論的なエネルギ-領域では適用が難しい。そこで、厳密なDiracスピノ-ルの代わりにガウス基底を用いた疑似状態による展開を考案した。手始めとして、実験デ-タの豊富な非相対論的な場合に適用し、非摂動的手法によるト-マスピ-クの解析に初めて成功した。
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