研究概要 |
神経回路網理論の骨格は情報処理の基本単位であるニュ-ロン,ニュ-ロン間の相互作用であるシナプス結合とそれを修飾する学習ル-ル,及び回路網を支配する力学構造の三つということになるが、それらの個々の性質を統合された全体との関連で調べてゆくことにより、神経回路網の情報処理様式を統一的に把握することが本研究の目的であった。今年度は特に、非対称結合をもつ回路網の性質を、一般的に非平衡統計力学の枠組で研究することにより以下に述べる結果を得ることができた。 1.きわめて単純な構造をもつ確率ニュ-ラルネットにおいても、カオスの生起することが確められ、非平衡相転移の典型的な例として解析を進める方法により、神経情報処理におけるカオスの果す役割を考察する手がかりを得ることができた。 2.素子としてのニュ-ロンがアナログであるとした、自己想起型のアナログニュ-ラルネットにつき、基礎的でかつシステムマテックな解析を行ないその特性を明らかにするとともに、ボルツマンマシ-ンとの性能比較を行なった。すなわち (1).アナログネットの記億容量の算出方法を二種類開発した。一つは、統計力学におけるレプリカ法を発展させたものであり、他の一つはセルフコンシステントなシグナル)イズ解析の方法をあみ出すことにより、非対称な結合をもったニュ-ラルネットにも適用可能なようにしたものである。 (2)記億想起にとって障害となるスピュ-リアス・ステ-トの総数の算出を行なった。 (3).(1)と(2)を基にアナログネットは、ボルツマンマシ-ンより性能のすぐれていることが結論できた。
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