本年度は本計画の初年度であり、実験システムの立ち上げ基礎デ-タの測定開始を行なうことが基本的方向である。補助金により真空分光器システムを購入し、水素原子ビ-ム装置を製作した。レ-ザ-システムは既に手持ちのシステムを校費により整備した。全ての装置は順調に稼働しすでに多くの結果が得られつつある。また極めて興味ある結果も得られつつある。 1)外場の無い系での水素原子における二倍高調波発生(SHG) 水素原子ビ-ム中に243nmの紫外レ-ザ-光を入射し1sー2sの2光子遷移の領域を掃引することにより2倍高調波発生を観測した。n=2ー1の遷移では多重極遷移は禁制であり、電気双極子遷移の効果のみを考えればよい。また、水素原子のビ-ムの濃度は低く衝突の効果も無視できる。2倍高調波発生の機構は原子がイオン化する際に生ずる電場(ChargeSeparationField:CSF)による1s、2s状態の混合に寄るものである。このCSFを定量的に測定するため水素原子に外部電場を13kV/cmまでかけることによりSHGの振る舞いを観測した。高電場領域での振る舞いを理論計算と比較較正しゼロ外場における実効的電場(CSF)を800V/cmと決定した。この値は原子のイオン化の際の電子の動的振る舞いの計算機simulationにより求められたものと良く一致する。 2)外部電場下での水素原子のSHG 本研究を実行、解析中に外部電場により分裂したシュタルク成分の中間では高効率波長変換のための理想的条件が満たされうることが発見された。これは極めて重要な発見であり、現在理論計算、実験を進めつつある。
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